2023/12/04

ツル植物のマクロ生態学

場所:高知大学 物部キャンパス 暖地フィールドサイエンス教育研究センター 1階講義室
日時:2023年12月20日(水)15:00〜
演者:日下部玄(東京大学 農学部 博士後期課程)
演題:日本列島における木本性つる植物の分布パタンとその登り方間差

木本性つる植物(以下:つる植物)は自重の支持を他に依存する樹木と定義され,細い幹と幹の太さに対し不釣り合いに大きな葉量に特徴づけられます。森林の群集以上のスケールを対象としたつる植物の研究は熱帯を中心にこの30年ほどで飛躍的に増加し,つる植物が宿主となる立木によじ登り樹冠を覆うことで宿主の成長や生存に負に作用し,森林の炭素蓄積量を低下させるといった機能が示されています。また,林業分野では材を変形,劣化させる要素として排除の対象として扱われています。一方で,種や個体レベルでは,つる植物が登り先を探したり,多様な特殊化した仕組みを用いてよじ登ったりする様子のユニークさは古くから学者達の興味を引いてきました。しかし,このつる植物内の多様さはつる植物の分布や森林に与える影響に関する研究では見逃されがちです。
演者は温帯を中心に広い環境条件の勾配を示す日本列島で,つる植物の登り方の違いに着目して,その分布パタンと,主に木部構造の視点から,そのメカニズムを調べてきました。セミナーではこれまでの研究を紹介し,つる植物群集の生態的機能について議論したいと思います。