2020/01/23

環境DNA

日時:2020年2月6日(木)13:10~14:40
場所:高知大学 物部キャンパス 4-1-13教室
講師:土居 秀幸 博士(兵庫県立大学大学院シミュレーション学研究科)
演題:環境DNAによる水圏生態系の生物種構成・遺伝的多様性調査手法の開発

環境DNA(環境中に遊離しているDNA断片)を用いた生物分布、種構成、遺伝的多様性の研究が近年急速に進展している。例えば、1Lの水を採水するだけで、ある水域での生物種の分布や生物量、魚類の種組成などを明らかにすることができ、革新的な生物調査技術として注目されてきている。演者らのグループはこれまで、環境 DNAを用いて、湖沼、河川、汽水域などの陸水生態系における生物の種組成を推定するとともに、外来種や希少種を早期発見するメタバーコーディングの手法を確立してきた。さらに、環境 DNA から遺伝的多様性を推定し、有効集団サイズを含む集団遺伝学的解析を可能にする技術を開発しつつある。この技術の実践により、生物群集調査や生物多様性の評価をより低コストで広範囲・高頻度で行うことができるようになり、生態学での調査を劇的に変革させる可能性がある。本セミナーでは、これまでの海洋や陸水域で行われたCREST 、推進費における環境DNA研究の成果について紹介する。さらに、今後の環境DNA,RNA研究の発展、先端オミクス技術を使った展望などについて紹介する。

(画像は環境DNA学会ホームページ http://ednasociety.org/edna より)

2020/01/16

タンポポ

事前の参加申し込みなど不要です。皆様のご参加をお待ちしております。

日時:2020年1月31日(金)16:30-18:00
場所:高知大学 物部キャンパス 暖地フィールドサイエンス教育研究センター 講義室
*いつもと建物が異なりますのでご注意ください*
講師:京極大助 博士(龍谷大学)
演題:交雑を避けるための適応としての棲み分けの理論的研究と、有性タンポポの雌雄間相互作用

本発表では2つの話題を提供する。まず、交雑を避けるために進化する棲み分けについての理論研究を紹介する。交雑を避ける適応(隔離強化)としては種認識形質の進化が議論されることが多いが、棲み分けが進化する可能性もある。また交雑するような近縁な2種は資源利用能力が似ていることも珍しくないだろう。交雑と資源競争の両方を考慮して、種認識と棲み分けのどちらが生じやすいかを個体ベースモデルを用いて比較したところ、棲み分けの方が生じやすいことが明らかとなった。これは棲み分けが同種個体を集合させることで資源をめぐる競争が種間でよりも種内で強くなることによる。また種認識と棲み分けの両方が進化できる場合には、棲み分けが種認識の進化を促進するいっぽう、種認識が棲み分けの進化を阻害する効果が見られた。発表ではこれらの結果と先行研究の比較についても議論する。

続いて、カンサイタンポポで明らかとなった植物の繁殖生態を紹介する。一般に、有性生殖をする生物ではオス・メス間で利害が一致しないことが多い。他個体のめしべに付着した花粉が、その花の行動(いつ閉じるかなど)を自身に都合のいいように操作する可能性が理論的に指摘されている。しかし、そもそも花粉がその受け手の行動に影響を与えられるのかは良く分かっていない。カンサイタンポポを用いた授粉実験を行ったところ、授粉する花粉の由来によってタンポポの花序が閉じる速度が異なることが明らかとなった。この結果は受け手の行動を操作する花粉が進化する可能性を示唆する。

2019/12/17

ダンダラテントウ

2020年最初のセミナーとなります。皆様のご参加をお待ちしております。

日時:2020年1月30日(木)16:30-18:00
場所:高知大学 物部キャンパス4-1-13教室
講師:河上康子 博士(大阪市立自然史博物館外来研究員)
演題:ダンダラテントウ鞘翅斑紋多型の地理的・経時的変動とその維持機構

テントウムシ類にはひとつの種で多くの模様,すなわち斑紋型多型をもつ種がある.斑紋型多型は表現型形質であり,種内変異のひとつである.このような形質の種内変異は,野外での環境変動や分布拡大に対応する適応進化の原動力であるが,なぜこのような斑紋型多型が存在し維持されているのか,詳細には解明されていない.
本研究では斑紋型多型をもつダンダラテントウCheilomenes sexmaculatusを研究材料として,標本調査と野外調査から斑紋型頻度の地理的変異のなりたちと経時的変動を検討した.本種は赤道付近から日本の本州中部まで生息する広域分布種である.はじめに斑紋型頻度の地理的変異を1549個体の標本調査に基づいて精査した.次に斑紋型の環境応答の観点から,斑紋型頻度の地理的変異のなりたちについて検討するために,分布域の拡大が気候要因と関係があるかどうかを調べた.さらに,本種の分布拡大の過程にともなう形質の変化を斑紋型頻度と体サイズに着目して調査した.その結果,本種は高緯度ほど黒い型の斑紋型が多く,低緯度ほど赤い型が多い明瞭なクラインを示すことがわかった.また1910年代から1990年代にかけて日本の北緯33度から36度に分布域を北上していた.この分布北上は過去100年の年平均気温15℃の等温線の北上とよく一致し,気候温暖化が分布拡大の要因のひとつである可能性が示された.さらにこの分布北上にともない成虫の体サイズは小さくなり,黒い型の頻度が増加していた.すなわち黒く小さな個体が,日照時間のより少ない高緯度への分布拡大に際して有利であったことが推察された.
次に,本種の斑紋型頻度の地理的変異がクラインをしめす要因のひとつをさぐるために,大阪個体群の斑紋型頻度の世代変異を9年間にわたり野外調査した.その結果,秋世代成虫が越冬した後の越冬世代には黒い型が増加するが,次の春世代には赤い型が増加することを毎年繰り返し,通年の斑紋型頻度が保たれている平衡頻度であることがわかった.越冬には日射を有効に利用できる黒い型が有利であるために赤い型は減少するが,生き残った赤い型の雌は体サイズ平均が黒い型よりも大きいために,有利に配偶する傾向があり,産下した卵は高い孵化率を示した.このことが,越冬により減少した赤い型が,次の春世代で割合を回復する要因のひとつと考えられた.越冬には不利である赤い型が有利となるような,世代ごとに方向の異なる選択がはたらくことにより,本種大阪個体群の斑紋型頻度が維持されている可能性が示された.
撮影・野村周平(科博)

2019/11/15

宿主操作

寄生者による宿主操作の理論研究について、下記の要領でセミナーがあります。
みなさまのご参加をお待ちしております。

日時:2019年12月6日(金)16:30-18:00
場所:高知大学 物部キャンパス3-1-11教室
講師:入谷亮介 博士(理化学研究所・数理創造プログラム)
演題:宿主操作現象を群集の中で理解するための理論的アプローチ

要旨:
寄生者の中には、一種の宿主種(中間宿主)の行動を操作し、二種目の宿主(終宿主)に食べられやすくするという、宿主操作を発現するものがある。寄生者による宿主操作によって生活史を遂げる確率が高まるため、宿主操作は自然淘汰により有利であり、多くの分類群に見られる現象である。また、宿主操作は中間宿主の見た目や行動の奇抜な変化をもたらすことから、長らく注目されてきた現象である。本講演では、そうした宿主操作現象の例を紹介するとともに、演者自身が共同研究を通じて取り組んでいる、宿主操作現象を理解するための数理モデルを紹介する。注目する現象は、2つある。ひとつめは、宿主操作の「度合い」が、時間的に変化する、スイッチング現象であり、ふたつめは、群集における宿主操作の進化現象である。これらに焦点を当て、宿主操作現象の真の姿を理解することに繋げること、そして多くの研究者が本フィールドに興味を持ってもらうことを目指して講演する。数式は多用せず、数理モデルから導かれた予測の生物学的エッセンスを伝えることを心がける。

2019/10/02

ポリネーター

2019年後期のセミナーとして以下のように企画しています。ご来聴お待ちしています。

日時:2019年10月18日
場所:高知大学 物部キャンパス1-1-13教室
講師:岸茂樹 博士(農研機構 農業情報研究センター)
演題:花と昆虫の関係をさぐる

要旨:
生物群集をネットワークとして扱うことによって、生物群集の構造や動態を深く理解できることがある。開花植物と、それらの花粉を運ぶ送粉者は相互作用のわかりやすい群集ネットワークとしてみることができる。私はこれまでいくつかの訪花昆虫ネットワークを対象に研究を進めてきた。研究の一つは、群集に内在する性の役割を探ることである。生物群集はこれまで種と種の関係として記述されてきたが、同じ種でもオスとメスで資源利用様式が異なることは多い。こうした性による違いが訪花昆虫ネットワークに与える影響を調べたところ、訪花昆虫のオスとメスのネットワーク構造は大きく異なることがわかった。講演ではこれらの内容を中心に、昆虫と花の関係について明らかになってきたことを説明する。

2019/06/22

理論生物学

理学部の加藤さんに朝倉キャンパスよりお越しいただきます。ご来聴お待ちしております。

日時:2019年7月1日(月)14:50-16:20
場所:高知大学物部キャンパス 3-1-13教室
講師:加藤元海(高知大学理学部)
演題:理論生物学研究室で行なわれている研究

理論生物学とは、狭義では、生命科学や生物学における現象を主に数学などを用いて数理的に研究することです。高知大学の理論生物学研究室では、野外の生き物を対象に、なぜそのような行動をとるのか、なぜそのような生態なのかを「考える」ことも広義の意味として研究対象としています。実際に研究室所属の学生は、自然豊かな高知で見られる様々な動物の生態について野外調査をとおして研究しています。理論生物学研究室の長所であり短所である特徴は、測定などを行なう機械や道具が一切研究室にないことです。機器や道具がないので、思うように生物を調べることができません(短所)。しかし、特殊な機械や道具がないことから、対象生物が縛られることはありません(長所)。ただ、たいていの生物は、「工夫」すれば何らかのデータが取れます。これまでの卒業研究や大学院の研究で行なわれた研究は、高知のさまざまな生息場所(山・川・海)に加え、さまざまな分類群、大きさにわたる動物(ヒトを含む)が対象となっています。哺乳類では、コウモリ、カワウソ、タヌキ、キツネ、ヤギ、ニホンザル、ヒト、クジラ;鳥類では、山奥に生息する鳥、フラミンゴ;爬虫両生類では、ヤモリ、カエル、サンショウウオ;魚類では、マンボウ、ジンベエザメ;無脊椎動物では、水生昆虫、サワガニ、プラナリア、ザトウムシ、クモ、マダニ(タヌキの外部寄生虫)、回虫(タヌキの内部寄生虫);その他の項目としては、底生藻類、昆虫食、タヌキの脂が学生たちの研究対象となっています。

2019/06/14

熱帯低湿地林

東南アジアの泥炭湿地林に関する講演です。ご来聴お待ちしております。

日時:2019年6月17日(月)14:50-16:20
場所:高知大学物部キャンパス 3-1-13教室
講師:嶋村鉄也(愛媛大学農学研究科)
演題:熱帯低湿地林を観る

熱帯の低湿地では、水が溜まりやすい場所で植物遺体の分解がある段階で抑えられ、泥炭が堆積し熱帯泥炭湿地林とよばれる特異な景観が発達することがある。泥炭といっても日本の釧路や尾瀬の泥炭はミズゴケ由来のものであるが、熱帯泥炭の場合は木質化した植物遺体由来のものとなっている。この泥炭は厚さが最大で20~30m程になり、ドーム状の地形を形成する。このドームの上では泥炭の厚さにしたがって、4-5種類の異なる植物群落が発達し、多様な植物が生育することが知られている。本セミナーでは、この泥炭湿地林の成り立ちや特異性について、植物群集動態や物質循環に関する研究を踏まえながら概説する。次に、この泥炭地を巡る世界的な状況について説明をし、現在行っている研究プロジェクトについて簡潔に紹介する。


このセミナーは生態学会中国・四国地区会の補助を受けました。