2024/08/30

着生ランの菌根共生

場所:高知大学 物部キャンパス 暖地フィールドサイエンス教育研究センター 1階講義室

日時:2024年9月11日(水曜日)14:50〜

演者:蘭光健人(東京大学・新領域創成科学研究科)
演題:ラン科着生植物の菌根共生

植物が根で真菌類(以下、菌根菌)と養水分の授受を行う菌根共生は、陸上植物の約9割が持つ地球上で最も普遍的な共生系の一つである。林冠に生育する着生植物にとって、樹上の強い乾燥や栄養ストレスの緩和に貢献する菌根共生は、樹上環境への適応や種多様化に寄与した可能性が高い。約28000種からなる維管束着生植物の67%を占めるラン科着生植物(以下、着生ラン)は樹上で最も種多様化した植物群である。また、ラン科は菌根菌への栄養依存度が極めて高い特殊な生態をもつことから、樹上環境への適応や種多様化に菌根菌が果たした役割は特に大きいと考えられる。しかし、着生ランの菌根共生に関する知見は極めて限られ、着生ランがどの様な菌と共生しているのかさえ情報が断片的であった。
演者はこれまで日本在来種を対象に、世界に先駆けて着生ランの菌根菌相を調査してきた。講演では日本に最も広く分布する着生ラン、クモラン、カヤラン、ヨウラクランをモデルにした菌根共生系の比較研究を主に紹介し、樹上における菌根共生系の多様性とその適応的意義について議論したい。