2020/07/27

ウグイの婚姻色

日時:2020年8月5日(水)15:00~16:30
講師:渥美 圭佑 博士(テキサスA&M大学/日本学術振興会海外特別研究員)
演題:Web検索とお見合いでせまる、淡水魚ウグイの婚姻色と種間交雑

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種間交雑を避けるうえで重要な「同種への配偶者選択」では、メス形質に基づいたオスの好みや、その個体差があまり調べられていない。私は博士課程前半で、淡水魚ウグイ属の繁殖隔離機構を調べた。これら3種は同時期・同場所で繁殖するにもかかわらず、交雑はまれである。ウグイ類は、雌雄ともに繁殖期のみ種ごとに違った婚姻色を出す。そこで私は、婚姻色をもとに個体が繁殖相手の種を識別し、交雑を回避していると考えた。
交雑回避が婚姻色の重要な役割であるならば、別種との混生域では婚姻色が種の典型的なパターンに収束する一方、交雑リスクのない単独分布域では、典型的パターンを持つ必要がなくなって婚姻色が多様化するかもしれない。釣り人らがウェブ上に投稿した写真を解析すると、実際に婚姻色パターンは混生域より単独分布域で多様だった。
さらに、水槽越しに同種・異種のメスを見せたところ、ウグイのオスは同種メスを好んだ。メスの婚姻色がオスの同種への選り好みをもたらしたと考えられる。これまでメスの派手な形質は、性淘汰や社会淘汰といった種内相互作用での意義が強調されてきた。それに対し本研究は、メス婚姻色が交雑回避に役立つことを示した。
最後に、同種への好みの強さが繁殖以外の行動と関連するか調べた。エゾウグイ単独分布域のオスでは、隠れている時間が大胆なオスほど別種メスを好んだ。大胆な個体ほど見慣れない異性を好んでしまうかもしれない。
性的単型(オスメスともに派手など)の進化的意義から、個性研究や市民科学の発展性、ウグイでやれそうな研究まで、様々な議論をしたい。


問い合わせ:鈴木紀之(高知大学)