2021/10/13

テナガショウジョウバエ

日時:2021年10月20日(水)13:30-15:00
場所:高知大学 物部キャンパス 暖地フィールドサイエンス教育研究センター 講義室
講師:網野 海(東京大学大学院農学生命科学研究科 博士課程)
演題:テナガショウジョウバエにおける闘争コスト最小化の仕組み

 動物はしばしば闘争を繰り広げ、勝者は配偶者や資源を手に入れる。ここで重要なのは勝った個体も負けた個体も、闘争に参加した時点で怪我のリスクや体力、時間など「コスト」を支払っているということである。
    演者は、激しい性的二型を有するテナガショウジョウバエのオス間闘争に着目し、特に闘争コストを最小化するための意思決定の仕組みについて多角的に解析を行ってきた。例えば、本種ではライバルの前脚長(武器サイズ)に応じて闘争をエスカレートさせるか否かが変化しており、闘争中にコスト最小化が行われている可能性が示唆された。また、過去の闘争経験を元に次の闘争行動が変わる現象である「勝者効果/敗者効果」は闘争後のコスト最小化と見なせるが、本種では他の多くの動物と異なり勝者のモチベーションが下がっており(通常は上がる)、その傾向は過去の闘争時間が長い場合に顕著であった。このことは、闘争が激しい(= 一度闘っただけで次に負ける確率が高いかもしれない)本種特有の仕組みが採用されている可能性を示唆する。
    本発表では、これらに加えて縄張り行動の定量化や代替戦略に関する研究を紹介すると共に、その過程で必要となった手法(オスの固定・体サイズ操作・深層学習による自動解析)の開発過程・応用可能性についてもお話しする。